<キーワード> 時間差比較補償法(TDCC法),2自由度制御(Two-degrees-of-freedom control),目標値フィルタ(Desired value filter),LQ最適制御(LQ optimal control),有限整定化(DeadBeat control or Dead beat control),PID/PI制御(PID/PI controller)
1. はじめに
PID制御は、現在でも実システムにおける帰還制御系の80パーセントを占めている。
本方法は、PID制御器を用いた帰還制御系の比較部に時間差比較補償器を用いる方法で、PIDパラメータによる調節に加えて、本補償器の調節パラメータ(基本的には2個)による目標値応答の調節機能を加えることにより、2自由度制御が可能とる。このことにより、最適制御に近い制御性能が得られる。
さらに、これをディジタル制御に応用すると、過大な操作量を生じさせないで有限制定制御が可能なことを見出した。
2. 時間差比較補償法(TDCC法)とは
フィードバック制御(帰還制御)の設計は,「帰還ループ内で生じる時間遅れ(位相遅れ)をいかに補償するか」にあり、種々の制御法が考えられてきた。
今回,フィードバック制御の原点に立ち返り、一巡伝達関数の時間おくれに相応するような時間差を置いて比較させる機能を導入することによって、「帰還ループ内で生じる時間遅れ(位相遅れ)」を補償する方法が考案された。これを時間差比較補償法(TDCC法)と称することにする。これはブロック線図の変換変換等によって、従来知られている各種制御法に移行できることがあるが、「帰還ループ内で生じる時間遅れ(位相遅れ)を補償する」という思想に基づいて呼称するものであり、フィードバック制御の原点がよく見える設計が可能となる。
本補償法の用途は2通りに分けられ、1つは、(1) 2自由度制御として用いられ、もう1つは、(2) ディジタル制御におけるLQ最適制御の有限整定化と操作量の低減化の同時効果を実現して用いられることが、現在、分っている。
前者(1) の場合、ロバスト性や外乱応答圧縮等の帰還制御を従来の制御器(PID制御器や PI 制御器など)で行わせ、目標値追従性や初期値応答の即応性を、帰還系の外に出した本補償法で行わせるという「2自由度制御」である。
後者(2) は、ディジタル制御におけるLQ最適制御を従来の方法で設計し、これを本補償法により、「操作量(入力量)のピーク値を低減化すると同時に、応答の有限整定化(デッドビート化)」によって応答時間を短縮できる、というものである。なお、連続制御でのこの効果は未だ研究されていない。
(1) 2自由度制御は、こちら
(2) デッドビート化は、こちら
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