3. 「操作量(入力量)のピーク値低減化と応答の有限整定化(デッドビート化)との同時効果」
のための時間差比較補償法(TDCC 法)のブロック線図
「操作量(入力量)のピーク値低減化と応答の有限整定化(デッドビート化)との同時効果」 に用いる本補償器のブロック線図を図1に示す。サンプル時間 のディジタル制御において、 2自由度制御のときと同様に、 目標値 と制御出力 との通常の比較(直接比較)のほかに、 目標値を1サンプル遅れ素子 により1サンプル時間づつ遅延させた複数の設定値 と制御出力 との 時間差比較を行わせ、直接比較も含めたそれぞれの偏差量に配分率 (ただし、 )を与えて加算して得られる量を、 改めて、本補償器の偏差量 として、帰還ループ内のLQ最適制御のためのコントローラに入力とするものである。 さらに、操作量(入力量)のピーク値を低減化をはかると同時に、 応答の有限整定化(デッドビート化)を実現させるように、 比較経路の個数 と各配分率 の値を設計するものである。 |
図1 ディジタルLQ最適制御における有限整定化と操作量ピーク値の低減化のための
時間差比較補償器(TDCC)のブロック線図
は直接比較の配分率、 は各時間差比較の各配分率を示し、
は1サンプル時間の遅れ素子を示す。
4. 時間差比較補償法(TDCC 法)の「操作量(入力量)のピーク値低減化と応答の有限整定化
(デッドビート化)との同時効果」への応用例
図2のように本補償器(TDCC)を搭載したLQ最適制御の帰還制御系を構成した場合を紹介する。 詳しくは、下記文献(1)、日本語では下記文献(2) [←ここをクリックするとPDF化された論文が提示できます]および、下記文献(3)-(5)を参照されたい。 図2中、 はディジタル表現(変換)によるプラントを示す。 図3に、ステップ状目標値応答における制御出力 と操作量(制御入力) の双方を、 TDCC を用いない従来のLQディジタル最適設計による場合と、 TDCC を用いた応答の有限整定化と操作量のピーク値低減化の同時効果が実現された場合とを、比較して示す。 これによれば,TDCC を使用することにより、制御出力 が有限時間で目標値 に整定され、 かつ、操作量 のピーク値が低減化されて、応答特性が改善されている。 他方、外乱 の影響は TDCC の有無に無関係で変化がない。 |
図2 TDCC を用いたディジタル最適制御の構成 |
図3 図2のLQ最適制御系において、本方法による操作量の
ピーク値低減とステップ状目標値応答の有限整定化の同時効果 外乱応答には変化を来たさない。 |
5. 「操作量(入力量)のピーク値を低減化と、応答の有限整定化(デッドビート化)の同時効果」
に関する時間差比較補償法(TDCC法)の発表文献
(1) Nobuo YAMAMOTO, Michiya MASUDA, Akinori KAWAHARA, Takaya TANABE, and Makoto KIKUCHI: Dead-Beat Effect in LQ Optimal Control with the Use of Time- Difference Comparison Compensation", 茨城工業高等専門学校研究彙報,第41号,pp.31-38 (2006).
6. 追記 この研究に対して、アメリカの Journal of Systemics, Cybernetics and Informatics 学会 の the WMSCI 2005 組織委員会から、2005年6月10-13日にアメリカ・フロリダ州オーランドで開催される 「第9回システム、サイバーネティスク、および、情報の国際会議 [the 9th World Multi-Conference on Systemics, Cybernetics and Informatics (http://www.iiisci.org/sci2005)] 」への講演依頼の招待メール (こちら ) が、2005年2月23日に届きました。しかし、茨城高専の校務に多忙なのと資金不足と英語力不足とで断念しました。 |